(続きです)
この無情の終了チャイムが鳴った時の表情がまた、なんとも印象的です。授業や清掃活動へ気持ちを切り替えなくてはなりません。一輪車ができず残念だという表情が主ですが、次なる取組へのやる気表情が少し見えます。
さらに何日か続け、登り棒につかまりながら一輪車に乗り、いよいよ他人の力を借りずに手を放します。ペダルに足の裏をあずけ、しっかり踏み込みながらスタートします。残念ながらすぐに一輪車から落下してしまいます。ペダルを1回も回せずに・・・。
落下の仕方から、今のは痛かっただろうなと思うこともしばしばです。何回挑戦してもすぐに落下してしまいます。
いやになってやめてしまわないかなと思いました。その時は(※注) 「あきらめたら、そこで試合終了だよ」と安西先生が三井に言ったように、私も言ってやろうと心の準備をしていました。でもそれは実現せず、子どもは頑張り続けていました。
この次が今回のタイトル「最高の表情」の場面です。
ある日、登り棒を離してスタートすると、一輪車から落ちずに何回かペダルを回すことができたのです。距離にしたら約5メートル、たったの数秒でしたがものすごく真剣な表情でした。勢いがあったので落下はとても激しく、上半身から地面に突っ込んでしまいました。
起き上がった時、私のほうを見てきました。
「やった!私、できたよ‼」
この心の声を発した時の表情が本当に最高でした。喜びのあまり痛みは感じなかったのでしょう。
多くの失敗を繰り返した人だけが出せる表情だったと思います。あきらめないで頑張った話は、よく読んだり聞いたりしてきましたが、長い時間をかけて私はそれを見ることができました。その子は大きな自信を得、一輪車がすぐに上達していきました。
他の子どもたちも何かで同じような体験をしているのではないでしょうか。そして、私はこれから失敗にめげず頑張れるのかなと自問自答しました。
子どもたちは皆、幸せに生きていくために頑張っています。幸せの形は「できるようになる」、「不安がなくなる」、「愛される」などいろいろあると思います。そんな幸せな時のいい表情をできるだけ多く見たい!と改めて感じました。
今回も長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。皆様にとって良い夏休みをお過ごしください。
(※注)は、漫画「SLAM DUNK」 第69話「WISH」(単行本8巻)にあるシーンです。多くの人が知っている超有名なひとコマです。